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東京地方裁判所 昭和34年(行)91号 決定 1965年6月18日

原告 田川精三

被告 文部大臣

訴訟代理人 小林定人 外八名

主文

本件を松山地方裁判所へ移送する。

理由

本件訴訟は、行政事件訴訟法上の抗告訴訟であつて、本訴において取消が求められているのは被告が国立愛媛大学の教員である原告に対してなした懲戒処分であることが明らかであるところ、教育公務員特例法九条、一〇条によればかかる懲戒処分は当該大学の管理機関の申出に基いて行うものであつて、右処分は任命権者たる被告の名義においてなされるものであるが、その実質上の権限は当該大学管理機関に帰属することが明らかである。

ところで、行政事件訴訟法一二条三項によれば取消訴訟は当該処分に関し事案の処理に当つた下級行政機関の所在地の裁判所にも提起出来る旨定められている。国立愛媛大学の管理機関が被告の下級行政機関であるかどうかはしばらくおくとしても、右管理機関が前記の如く本件処分について実質上の権限を持つている以上、行政事件訴訟法一二条三項の趣旨から見て本件訴訟につき右大学管理機関の所在地の管轄裁判所たる松山地方裁判所も管轄を有するものと解するのが妥当である。

そして原告及び申請されている証人の殊んどが右裁判所管内に住所を有しているのであるから、原告の移送申立書等から見ても本件を同裁判所に移送し、同裁判所において主張立証を尽させることが必要と認められるので民事訴訟法三一条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 橘喬 高山晨 田中康久)

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